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さとうりゅうた

- 旅のエッセイ -

ライター:さとうりゅうた 最初は欧米諸国を旅するが、友人の話がきっかけでアジアに興味を抱く。大学卒業後、働いて資金をつくり、97年4月ユーラシア横断の旅に出る。ユーラシアの西端にたどり着くまでに2年を費やす。

さとうりゅうたの行路

27Apr04

バナナボートに、銀の月夜

バナナ・パンケーキ、なんて、つまらない食べ物がある。 ホットケーキよりももっと簡単な生地に、バナナを放り込んで焼いただけの簡単な食べ物。 それにはちみつなんか塗って食べる。 長くアジアの発展途上国を旅していると、極端に甘いものが恋しくなるときがある。 それもただ甘いお菓子なんかじゃなくって、もっとこう、西洋的な甘味。 チョコレートだとか、ケーキだとか、そんなの。 一応それらの国々にもあるにはあるのだが、それがまた極端にマズイ。 きっとそれ作ってる人達がおいしいの食べたことないからだと思うんだけど、本当にマズイ。 味がドギツイというか………。 根本から間違っているというか………。 バナナ・パ...

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20Apr04

ベトナムの雨

全く関係がなさそうで不釣り合いにみえるものが一緒になって醸し出す絶妙なハーモニーというものが世の中にはたまにある。 もうずいぶん前に、「夏至」という映画を見た。ベトナムを舞台にしたものだ。ベトナミーズ・アメリカンの監督が撮った映画。 内容は特に憶えていないのだが、映像がとてもきれいで、アメリカ育ちのベトナム人監督だからこそ感じとれるであろう、洗練された、客観的なベトナムがうまく表現されている。 アジア的なものと、それとはまるで正反対の欧米的なものが混ざり合うと、まれに、全く新しいスタイルのものが生まれることがある。 それは斬新で,一歩先ゆく文化だと思う。 「夏至」に関していえば、音楽だ...

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14Apr04

アザーンの聴こえる、朝

パキスタンに入って初めて知ったんだけど、イスラムの国ではどこの街でも大体一日に何回か決まった時間に、何処ぞやのモスクからアザーンが聞こえてくる。 アザーンっていうのは、お祈りね。 拡声器かなんかでそれを大きな音で流すんだ。     ――アッラー,アクバル―― で始まって、何分かそれが続くんだ。 アッラーっていうのは「神様」ってことで、アクバルっていうのは「偉大」ってことらしい。 要するに、「神は偉大である」、ってことを言っているのだ。 パキスタンの北の方、ギルギットっていう小さな町には日本人の集まる有名なゲストハウスがあって、オレがそこにいたときにはクレイジーで面白い奴らがたくさんいた...

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07Apr04

満月と、アンコールワットと

もう何年も前のことになるんだけれど、カンボジアという国へアンコールワットという石のお寺を見に行った。 千年も前に建てられた仏教寺院。 ジャングルの中に、まるで時間なんて何も関係ないみたいに、永遠に存在し続ける。 朝も。昼も。夜も。 松ぼっくりみたいな三本の塔の上を太陽は昇っては沈み、沈んでは昇る。 月も。 星とともに、その灰色の建築を銀の光で照らしだす。 寺は、重たい森林の空気を膝もとにたたえ、さんさんと月光を浴び続ける。 カンボジアという国は、政治が腐っているから、金で買えないものなんて何もなく、嘘か本当か分からないような残酷な噂が、いくつもいくつも囁かれるようなそんな国だから、警察だ...

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31Jan04

NIRVANA

ひとりぼっちの秋、中国東北部紅い夕日の沈む淋しい裏通りをひとりぼっちで歩いた。 『NIRVANA』というバンドがある。 もう何年も前に解散したバンドだ。 カート・コバーンというボーカリストがいた。 "グランジ"というロック・ムーブメントの火付け役となった人だ。 ぼろぼろのジーンズを履いて、髪は何日も洗っていないような長髪、酔っぱらったようにふらつきながらギターを弾き、叫ぶようにして歌う。 カート・コバーンはショットガンで頭を吹き飛ばして自殺して死んだ。 彼の存在無くしては「NIRVANA」は存続しえず、その死によって必然的にバンドは解散した。 最初の内はそんなに好きなわけではなかったんだ。...

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21Jan04

ライターの石

ライターには、火をつけるときにパチッと火花を飛ばすための小さな石が組み込まれている。 電子式で、ないやつもあるけど。 大体入っていると思う。 その石は使っていくにつれ、削れて小さくなっていくので最終的には無くなってしまい、火がつけられなくなるという事態が発生する。 高級なライターだったら、交換用の石に取り替えてまた使い続けることが可能なのだが、いわゆる百円ライターのような安物だったら構造上簡単に交換などできないため、ポイッと捨てられてしまうのだ。 使い捨てライターと言われるゆえんだ。 どこが最初だったかな。 初めて百円ライターの石を交換したのは。 ネパールだったと思う。 そう。 取り替えてく...

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15Jan04

地平線

初めて地平線を見たのは、19の夏の頃だったか。 もう、10年以上も前のことになる………。 それまで自分は、地平線なんて見られないものだと思っていた。 こんな小さな国じゃあ。 大地の少ない、この国じゃあ。 買ったばかりのバイクで、日本を走った。 北へ北へ向かった。 ひたすら北へ向かって駆け抜けた。 北海道には、地平線があった。 果てしなく何もなく、何もないってことがこんなにも気持ち良く、爽快であるということを初めて知った夏だった。 地球を見た気がした。 それから何年もたって、その間に何度も地平線を見た。 なかには、地平線ばかりの国もあった。 当たり前のようにそこに大地が広がっていた。 ...

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25Dec03

カリフォルニア・ドリーミン

ぼくは、冬が嫌いだ。 寒いから。 木々は枯れ果て、空は灰色。 とても憂鬱……… そんなとき、カリフォルニアにいられたらな、と思う。 夢のカリフォルニア……… カリフォルニアに行ったのはもう10年も前になるのか。 海と太陽と潮風と。 湿気のない乾燥した空気に、降り注ぐ陽光。何もかもが光り輝くまばゆい風景。 まるっきり、夢のような世界……… あのね、世界は何でカリフォルニアみたいではないのかと、ぼくはいつも疑問に思うんだ。 カリフォルニアみたいなところがあると思えば、ボスニア・ヘルツェゴビナみたいなところもある。 年中太陽がでないところもある。 そんなの、不公平だと思うんだな、ぼくは。 あ...

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20Oct03

雪のアウシュビッツ

雪のアウシュビッツは、雪に覆われ白く輝いていた。 ぴん、と、張りつめた静寂に包まれて、美しく輝いていた。 何万人も殺されたところだ。 人間が、人間を殺すために、ガス室に閉じ込めて、毒ガスを撒き散らす。 人々は、苦しみながら、死んでいく。 祝福されて生まれてきたはずのけなげな魂が、どろどろの靴で踏みにじられる。 一体誰にそんな権利があったろう? その人達を愛した別の人達は、一体どんな心持ちでその現実を受け止めたろう。 憎しみが憎しみを呼んで、体内に充満し、自家中毒している。 おれは、人を信じることができない。おれは、何でこんなにも人を憎むのだろう。 なんでこの世には憎しみという感情が存在するの...

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15Oct03

ぱさぱさのタイ米

タイ米って、ぱさぱさなんだよね。ほそながくって。 あんまり味がしない。味気ない。 でも今、無性にそれが食べたいんだ。 ココナッツ風味のさらさらしたカレーなんか上にかけちゃって。 そうすりゃあ完璧なタイ・カレー。 マサラ風味のさらさらしたのかけりゃあ、インド・カレー。 うまいよね。 最近はまって、よく食べにいく。 食べてると、旅してたときの風景とかぼんやりと浮かんできて、ちょっと懐かしい気持ちになったりもするんだ。 たのしいかんじ。 でも、ぜいたくを言うと、ごはんが違うんだな。これが。 おいしい日本米なのである。 ちょっとさめてしまう。 そこだけは気を使って日本人にあわせているのかな。 それ...

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01Oct03

五か国語を話す少女

サイゴンのマーケットに五か国語を話す少女がいた。 道ゆく観光客に色んな言葉で話しかけ、お店に案内し、マージンをもらっているのだ。 まだ10才ぐらいの女の子だよ。 フランス人のおばちゃんたちにフランス語で声をかけていて、ぼくを見つけると、すぐさまぼくの方に寄ってきて日本語で声をかけてきたからびっくりした。 しかもけっこう流暢な日本語で、普通にぼくと会話ができる。 フランス人のおばちゃんたちとも普通に会話してたみたいだから、フランス語も相当話せるみたいだ。 「お兄さん、おみやげあるよ、買ってく? 何探してるの?」 10才のくせに、お兄さん、なんて言われるとホステスさんか何かみたいでちょっとおか...

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09Jun03

ある光景

恐ろしい光景を見たことがある。 ひょっとしたら、今この瞬間、人が死ぬかもしれない。 そういう場面に出くわした。 人の心とは不思議なもので、そういうギリギリの場面ではなるべく精神が混乱しないよう何らかの自衛作用が自動的に働くらしく、ぼくは目の前の出来事を自分とは関係のない客観的な出来事としてまるで異次元の世界のことのように冷静に見つめていた。 多分、どちらかが死んでもパニックなど起こさずにけっこう冷静に対処できていたように思う……… インドにはこの21世紀の近代的な世の中においてなお、恐るべき原始的な制度がいまだに現存しており、その制度は、インド社会に不可触賤民という人間以下の動物のような扱い...

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30May03

ダライ・ラマ

「首にかけてる赤いひも、それ、一体何だよ?」 「ああ、これか。これはダラムサラにダライ・ラマに会いに行ったとき、彼からもらったものなのだよ。それ以来、常に首にかけているのだよ」 そいつはオレに赤いひものことを、そう説明した。 ダライ・ラマとはチベット仏教における最高指導者であり、チベット亡命政権の国家元首でもある。 加えて、衆生救済のためあえて涅槃に入ることを拒否し、輪廻世界に留まり続ける観音菩薩の化身であると信じられている。 ダラムサラとはインドの北部にある、山奥の小さな村のことで、ダライ・ラマがチベットからインドに亡命し、亡命政権を樹立したところだ。 オレの友達は遥かそんなところま...

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14May03

シリアのために、アメリカのために

ぼくはあんまり時事的なことをここに書くのは好きじゃないのだが、それは、出来事はひとつでも、人それぞれ色んな意見があって、それらの主張は結局お互い相容れず、平行線を辿って、いらないエネルギーばかりを浪費することになり、結局無意味に消耗するのが嫌だからだ。 そんなのは現実だけで精一杯だ。 熱い議論を誘うような題材はあんまり選びたくないのだ。 だが。 今回はどうしても言いたいことがある。 それを聞いたとき、怒りとか、悲しみよりもむしろ、ぐったりとした、とても不快な疲労感に打ちのめされた気分を味わったからだ。 やりきれない思いが胸の中に充満して爆発しそうだったからだ。 周知のように、アメリカとイラ...

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07May03

ぜいたくな話 Part 2

以前、「ぜいたくな話」という一遍を書きましたが、また似たようなのを思い出したんで、紹介したいと思います。 ただし、今回は、ちょっときたない話です。 それでもよろしければ、この先にお進み下さい。 ぼくが初めて行ったアジア圏は東南アジア。 東南アジアの国々は御存じの通り衛生状況があまりよろしくないので、無菌国家日本でぬくぬくと育ってきたぼくの内臓は、敏感にそれに反応して一発でブッ壊れてしまいました。 半年ぐらい,下痢に苦しむ毎日。 ぼくは、10年以上ぶりぐらいに恥ずかしながらおもらしをしてしまったんです。おおきいほうをね。 だって普通におならをしたら、もれちゃったんだもん。 別にお腹が痛かったわ...

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01May03

たのしかったこと

ぼくはどちらかと言うと、インドア派でアウトドアな遊びはあんまりしたことがなかったし、また、それほど興味もなかった。 何だか目に見えて健康的な雰囲気に、反発心だかすねてんだかよく分からない心境になって、それこそよく分からない嫌悪感を、アウトドアに対してずっと抱きつづけていたのだ。 でもアジアを旅行するって事は無理矢理アウトドアをさせられてるのと同じようなものなので、知らない間にぼくはアウトドアな行いをどんどんこなしつつあったのだ。 それでもぼくは反発して、なんだよこんなん、暑いだけだよ、とか、だりぃよ、山なんて登りたくねぇんだよ、とかぶつくさ文句を言ったりしていた、の、だが、実際は心の奥底でそっ...

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25Apr03

キサールの幽霊

つい最近読んだのが、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」という本。 その中で、"夜の暗さ"のことについて述べられていた。 ちょっと抜き書きしてみる。  けだし近代の都会人は本当の夜というものを知らない。いや,都会人でなくとも,この頃はかなり辺鄙な田舎の町にも鈴蘭燈が飾られる世の中だから,次第に闇の領分は駆逐せられて,人々は皆夜の暗黒というものを忘れてしまっている。  私はそのとき北京の闇を歩きながら,これがほんとうの夜だったのだ,自分は長らく夜の暗さを忘れていたのだと,そう思った。そして自分が幼いおり,覚束ない行燈の明かりの下で眠った頃の夜と云うものが,いかに凄まじく,わびしく、むくつけく,あじきないも...

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19Apr03

ヴードゥー・チャイルド・スライトリターン

ジミ・ヘンドリクスって知ってるかい? ある、天才ロック・ギタリスト。ギターを共鳴させる天才。 彼にとっては言葉を話すより、ギターを弾くことの方がより有効なコミニュケーションの手段だったんだ。 ヴードゥーの申し子。悪魔に魂を売ったギタリスト。 ドラッグとブルースに溺れた男。悲しい男。 ネパールの山奥の山小屋に、奴が壁に書き付けた落書きがあるんだ。 それは、こんな詩の一遍。       「ヴードゥー・チャイルド」  俺は氷山の頂きを眺めていた。  俺は今にも崩れ落ちそうだった。  俺は氷山の頂きを眺めていた。  俺は今にも崩れ落ちそうだった。    氷山を形作っているそのかけらは、突き詰め...

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11Apr03

くわをかついだ男

くわをかついだ男に出会った。パキスタンの山奥でのことだ。 風の谷、と呼ばれる風光明媚な山道で、透き通った青空をバックに光り輝く日光をさんさんと浴びながら、その男はくわをかついで歩いていった。 おそらく、4、50代だと思われるその男は、20代前半のぼくを置き去りにしてスタスタと歩いていってしまう。 恥ずかしながらこのぼくは、ぜぇぜぇ言ってまるっきり追いつくことができなかったんだ。 荒ぶる呼吸の中で汗を垂らしながら、その男の姿にある種の感銘を覚えた。 近代的な装備に身を固めているぼく。 かたや、簡単な普段着にサンダル姿のその男。 速くて追いつけない。 男は口笛でも吹かんばかりの身軽さで、見る見...

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04Apr03

煙草

ぼくは以前まで煙草を吸っていた。今は吸わないけど。 ネパールにいた頃は吸っていた。けっこうすぱすぱ吸っていた。 カトマンズで乗り合いバスに乗っていて、煙草を吸っていて、ぼくは紳士的なマナーを心得た人間なので、プラスチックのフィルムケースを携帯灰皿としていつも持ち歩いていて、そのときもそれを使ってその中に吸い殻を捨てていた。 するとそれを見ていたネパール人の少年が、    "おいお前、一体何してるんだ?        そんなものをそんなところにため込んで              一体どういうつもりなんだ?" とちょっとバカにしたような感じで笑いながら言ってきた。 やつらには公共道徳とい...

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