Jun03
誕生石の歴史
誕生石の起源
1年の12ヵ月に特定の宝石を配し、自分の生まれた月の宝石を身に着けるという誕生石の習慣は現在では広く浸透している。
誕生石の起源は聖書の時代にまではるか遡る。 聖書には宝石についての記述が度々現れる。
ユダヤ人が古代から宝石について関心を寄せ、特別視していたことが伺える。
旧約聖書の「出エジプト記」には、モーゼの兄大祭司アロンが身に着ける胸当てに飾られる12個の宝石が主によって仰せられたと書かれてある。
新約聖書の「ヨハネ黙示録」では、最後の審判の後に現れる新しい世界の都「新エルサレム」の城壁の土台石は12個の宝石で飾られていたと記載されている。
[出エジプト記 新共同訳28章17?21節]
次に、金、青、紫、緋色の毛糸、および亜麻のより糸を使ってエフォドと同じように、意匠家の描いた模様の、裁きの胸当てを織りなさい。
それは、縦横それぞれ一ゼレトの真四角なものとし、二重にする。
それに宝石を四列に並べて付ける。
第一列 ルビー トパーズ エメラルド 第二列 ざくろ石 サファイア ジャスパー 第三列 オパール めのう 紫水晶 第四列 藍玉 ラピス・ラズリ 碧玉
これらの並べたものを金で縁取りする。
これらの宝石はイスラエルの子らの名を表して十二個あり、それぞれの宝石には、十二部族に従ってそれぞれの名が印章に彫るように彫りつけられている。
[ヨハネ黙示録 新共同訳21章11?14節、18?20節]
都は神の栄光に輝いていた。その輝きは、最高の宝石のようであり、透き通った碧玉のようであった。
都には、高い大きな城壁と十二の門があり、それらの門には十二人の天使がいて、名が刻みつけてあった。イスラエルの子らの十二部族の名であった。
東に三つの門、北に三つの門、南に三つの門、西に三つの門があった。
都の城壁には十二の土台があって、それには小羊の十二使徒の十二の名が刻みつけてあった。都の城壁は碧玉で築かれ、都は透き通ったガラスのような純金であった
都の城壁の土台石は、あらゆる宝石で飾られていた。
第一の土台石は碧玉、第二はサファイア、第三はめのう、第四はエメラルド、 第五は赤縞めのう、第六は赤めのう、第七はかんらん石、第八は緑柱石、第九は黄玉、第十はひすい、第十一は青玉、第十二は紫水晶であった。
古代と現代の宝石名の違い
聖書にはこのように頻繁に宝石の名前が登場する。
しかし、これらの宝石名は古代の宝石名と必ずしも一致するわけではない。
現代では鉱物上分別する宝石でも当時の世界では色彩と外観の相似などによって同一名で呼んだり、時代によって宝石名が変わったりしている。
そのため当時の宝石が現代のどの宝石にあてはまるか見極めることは非常に困難である。
例えばルビーとはラテン語で赤を意味するルベウス(rybeus)が語源で、古代から中世にかけては赤い石の総称であった。
英王室の至宝のひとつである「黒太子のルビー」は今日ルビーと呼ばれる鉱物ではなく、別種のスピネルである。
同じくサファイアもラテン語で青を意味する「sapphirus」が語源である。サファイアとルビーは色が異なるだけで同じコランダムと呼ばれる鉱物だが、このことが明らかになったのは近年になってからである。
旧世界のサファイアの産地はセイロン島で非常に希少であるため、聖書の時代にサファイアと呼ばれた石は当時一般的に知られていたラピスラズリであることは間違いなだろう。
ユダヤ人と宝石
古代、宝石を産する地は主にインドを中心とした東洋だった。
東洋の宝石を西洋へ橋渡ししたのは聖書の時代から宝石に大きな関心を持ち続けたユダヤ人たちであった。
宝石は小さく携帯性に優れている。
商売に長けたユダヤ人にとって少量でも巨富を産む宝石は交易には最適の品であった。
また迫害の歴史を持つ彼らにとってはいつでも運び出せる資産価値のあるものだった。
ユダヤ人はイエス・キリストを十字架に磔つけた民族としてキリスト教世界のヨーロッパの中で忌み嫌われ、様々な迫害を受けてきた。
十字軍によるユダヤ人虐殺[11?13世紀]、スペインにおけるユダヤ人追放令[15世紀]、イタリアでのユダヤ人隔離政策(ゲットー)[16世紀]などなど。政策が変わるたびにユダヤ人は追われ、安住の地を求めてさまよった。
14世紀前半ポーランド。統一国家として回復したばかりの国を立て直すため、王侯貴族たちは国家の財政や所領経営などにユダヤ人を重用し保護した。
このユダヤ人に対する寛容的政策のため迫害から逃れてきたユダヤ人たちは大挙してポーランドに押し寄せた。
17世紀半ばにはユダヤ人はポーランドの人口の10%にも及び、ユダヤ文化はこの地で大いに栄えた。
誕生石の習慣はこのような背景をもとに、ポーランドに移住したユダヤ人の手によって広められたと言われている。
誕生石は当初その宝石が属する月にもっとも神秘的力が大きくなるというものだったようだ。
これだと宝石の力を1年を通じて享受するためには12種類の宝石を用意しなければならず、財力を必要としたため、次第にその人の誕生月に属する宝石を持つ事によっても同じ効果が得られるというように変化していった。
18世紀末、戦争や内戦により国力の衰えたポーランドはロシア、プロイセン、オーストリアに分割されポーランドの名は地図上から姿を消した。
ポーランドを飲み込んだ19世紀末のロシア。「ポグロム」と呼ばれる反ユダヤ暴動が各地で勃発、ユダヤ人の受難の時代が再び始まる。
この災難から逃れるためにユダヤ人たちはロシアを脱出、新天地アメリカを目指した。
新大陸での生活のために携帯した宝石を手放すもの、それを買い取るもの、また宝石業に携わるものも多くいたであろう。
誕生石の統一
1912年にアメリカの宝石業者の間で宝石の普及を目的に誕生石を統一することを決めた。
それが▼次の表(アメリカ)である。
| 日本※ | アメリカ | イギリス | フランス | |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | ガーネット(柘榴石) | ガーネット | ガーネット | ガーネット |
| 2月 | アメシスト(紫水晶) | アメシスト | アメシスト | アメシスト |
| 3月 | アクアマリン※2 珊瑚 |
ブラッドストーン(血石) アクアマリン |
ブラッドストーン アクアマリン |
ルビー |
| 4月 | ダイアモンド | ダイアモンド | ダイヤモンド 水晶 |
ダイアモンド サファイア |
| 5月 | エメラルド 翡翠 |
エメラルド | エメラルド | エメラルド |
| 6月 | 真珠 | 真珠 ムーンストーン |
真珠 ムーンストーン |
ホワイト・カルセドニー(白瑪瑙) |
| 7月 | ルビー | ルビー | ルビー | カーネリアン(紅瑪瑙) |
| 8月 | サードニックス(紅縞瑪瑙) | サードニックス クリソライト(貴橄欖石) |
サードニックス ペリドット(緑柱石) |
サードニックス |
| 9月 | サファイア | サファイア | サファイア ラピスラズリ |
ペリドット |
| 10月 | オパール トルマリン |
オパール トルマリン |
オパール | パール アクアマリン |
| 11月 | トパーズ | トパーズ | トパーズ | トパーズ |
| 12月 | ターコイズ ラピスラズリ |
ターコイズ ラピスラズリ |
ターコイズ | トルコ石 マラカイト(孔雀石) |
日本 全国宝石商組合制定(1958年)
フランス ルイズ・タルク女史が制定
アメリカ 宝石小売商組合制定(1912年)
イギリス 貴金属商組合制定(1937年)
※現在の日本では6月の真珠の代わりにムーンストーン、8月のサードニックスの代わりにぺリドット、11月のトパーズの代わりにシトリン(黄水晶)が用いられることが多い。
当時普及し始めてきたダイヤモンドが4月に選定されているが、ラピスラズリは聖書に何度も登場するほど古代から有名な石にもかかわらず選ばれなかった。
今日宝石の王として疑いの余地のないダイアモンドであるが、近代になるまで宝石としての認知度は大変低かった。
加工がその硬度ゆえに非常に困難であるのと、当時は産地がインドくらいで希少だったからである。
ダイアモンドが現在のようにこれほどポピュラーになるのは19世紀に入ってからである。
19世紀半ば、南アフリカでダイヤモンドの大鉱脈が発見される。その埋蔵量はこれまでのものと比べものにならないほど膨大なものだった。
ダイアモンドの加工、販売、流通は古くからユダヤ人が一切を担っていた。ユダヤ系のロスチャイルド財閥に支援されたデビアス社は生産と供給をコントロールするためダイアモンド鉱山の買収を進め、19世紀末には当時のダイアモンド鉱山の9割を支配下に収めた。
誕生石に新しい宝石であるダイアモンドが加えられたのはこうした背景があったのである。
アメリカの誕生石を基準として各国も独自の誕生石を選定、日本では1958年に東洋七宝の珊瑚と翡翠を加えて日本の誕生石とした。
自然からの贈り物
今日の私たちは、宝石の持つ輝きや希少性を装飾品としてまたは財産として利用している。
しかし古代の人々は、この自然からの贈り物である宝石を神秘的な存在として超自然的な力を備えていると信じ、宝石を身に着けることは護身符的な役割を意味していた。
世界各地で各々の宝石にまつわる伝説、物語は数知れない。
科学が高度に発達した今日、私たちは宝石がいくつかの元素からなる化合物であることを知っている。また宝石の持つ超自然的な力とは単なる迷信であり、非科学的であるとも理解している。
しかし、自然が産み出した輝きに感動を覚え、魅了されるのは古代人も現代人もあまり変わりないのかもしれない。
| 誕生石 | 意味 | |
|---|---|---|
| 1月 | ガーネット | 貞潔・友愛・忠実 |
| 2月 | アメシスト | 誠実・心の平和・注意心 |
| 3月 | アクアマリン | 平穏・勇気・聡明 |
| 珊瑚 | 幸福・長寿・知恵 | |
| ブラッドストーン | 勇気・聡明 | |
| ルビー |
愛・威厳 | |
| 4月 | ダイアモンド | 清浄無垢 |
| 水晶 | 願望成就 | |
| サファイア | 誠実・徳望 | |
| 5月 | エメラルド | 不滅・廉潔 |
| 翡翠 | 健康・長寿・福徳 | |
| 6月 | 真珠 | 健康・長寿・富 |
| ムーンストーン | 幸福 | |
| ホワイト・カルセドニー | 長寿、健康 | |
| 7月 | ルビー | 愛・威厳・神力 |
| カーネリアン | 不幸の予防・深い友情・堅忍不抜・剛毅 | |
| 8月 | サードニックス | 夫婦の幸福 |
| クリソライト | 心を喜ばせる | |
| ぺリドット | 夫婦の幸福・和合 | |
| 9月 | サファイア | 誠実・徳望 |
| ラピスラズリ | 真実・誠実・天国 | |
| 10月 | オパール | 希望・無邪気・純粋 |
| トルマリン | 寛大・忍耐・友情 | |
| 真珠 | 健康・長寿・富 | |
| アクアマリン | 平穏・勇気・聡明 | |
| 11月 | トパーズ | 友好・愛・潔白・希望 |
| 12月 | ターコイズ | 成功・繁栄・霊の喜び |
| ラピスラズリ | 真実・誠実・天国 | |
| マラカイト | 計画の実現 |
参考文献
「宝石 神秘と伝統」 中村善吉
「聖書の鉱物誌」 島田 イク郎



コメント (1)
初めまして。ハ−トの由来。で検索中に、ホワイトハ−トのペ−ジにたどり着き、ラピスラズリ、誕生石の由来に触れることができました。一言一言に重みを感じました。さわやかなずっしり感を感じました。
ワタシは、貝にまつわる神話や伝説が好きで貝のお守りを作ってます。世界の伝統色サイトで作品をご紹介いただいてます。ブル-の名を持つホワイトハ−ト。感じてもらえたらうれしいです。歴史を感じに、またおじゃまさせていただきますね。