もっとも古い時代の宝石
ガーネット、和名「柘榴石」。
天然のままで美しい赤色と、12面体や24面体の球状に近い結晶を持ち、もっとも古い時代から宝石の一つとして使われてきました。
岩の割れ目の中に輝くガーネットの赤い粒は古代人の心を引き付けたに違いありません。
ガーネットの名はラテン語の「granum(種子、穀粒)」から派生したgranatum(多くの種子をもったもの=柘榴)から来ています。
グラニュー糖(granulated sugar)やスペインの都市グラナダ(Granada:スペイン語で「柘榴」の意)もこの派生語の一つです。
この石の色が柘榴の実のように赤いことから柘榴石と呼ばれ、深紅のガーネットはしばしばルビーと混同されることもありました。

ガーネットの歴史と盛衰
ガーネットの歴史は古代まで遡り、多彩な伝説に満ち、さまざまな物語の中で語られています。
ユダヤ人の伝説によると、ガーネットは、四十日四十夜続いた大洪水の中、ノアの箱舟で灯火の役目を果たし、暗闇に明かりをもたらしたと言われています。
中世の十字軍の騎士たちは、戦場に赴く際にガーネットを身に着けていたと、ある歴史書は伝えています。
ガーネットの持つ深紅の輝きは血を連想し、ガーネットを持っていると傷を受けないと信じられていたからです。
19世紀の英国では、ビクトリア朝時代にガーネットが宝飾品として最盛期を迎えました。
当時、チェコにはガーネットを大量に産出する産地があり、ガーネットに金の台座を合わせた豪華で華やかな宝飾品が人気を博しました。
ちょうどゴールドラッシュの時代と重なり、金も手に入りやすくなっていた時でした。
博物館に陳列された数々のガーネットと金の宝飾品を見ると往時の人気ぶりが容易に想像できます。
しかし、20世紀に入り、スリランカやブラジル、アフリカなどからより色の美しい宝石が手軽に入るようになったため、ガーネットの人気は衰え、次第に忘れ去られていきます。
現代では、ガーネットは1月の誕生石として、持ち主の変わらぬ愛情を象徴する宝石とされています。

豊富な色彩
ガーネットの色は赤色だけではありません。黄、オレンジ、緑、紫など多様な色があり、とても華やかな石です。
実はガーネットは、1種類の鉱物や宝石を指すのではなく、多様な化学組成を持つ鉱物のグループ名です。
産地や化学組成、生成の仕方によって多種多様な色が存在します。
一級の宝石にも劣らない輝きを持つものがありながら、産出量が多いため、宝石として高く評価されてきませんでした。
しかし、近年になって新しい化学組成のガーネットが次々に発見され、希少で色の美しいものは価値を見直されているようです。

蟻塚ガーネット
ガーネットには宝石としての価値以外にもう一つ興味深い話があります。
アリゾナ州、ナバホ族居住区。ここにはアントヒル(蟻塚)ガーネットと呼ばれる面白い名前のガーネットが存在します。
風化した岩と砂が延々と広がるこの地域には、蟻塚を作る種類の蟻が生息しています。
彼らは地中を掘り進み、土を地上に運んで巣を作りますが、このとき邪魔になったガーネットを巣の入り口に捨てます。
当然蟻が運べるものなので豆粒より小さなものです。
これがアントヒルガーネットとして売られています。

ダイヤモンドの指標
ガーネットは超高温・超高圧の条件下で生成される鉱物です。これと同じような条件で生成される鉱物があります。
宝石の王、ダイヤモンドです。
ダイヤモンド鉱床では、ガーネットがダイヤモンドとともに見つかることがよくあります。
時にはダイヤモンド結晶の中に含まれていることもあります。
そのため、ガーネットはダイヤモンド鉱床を探す際の指標として利用されます。
アフリカ南部・ボツワナの砂漠で、ダイヤモンド鉱床を調査していたデビアス社は、闇雲に地面を掘り返すのではなく、蟻塚に目をつけました。
蟻たちは地中深くに穴を掘り、地下の土を地上まで運んできます。
巣作りに邪魔な鉱物は巣の周りに捨てるため、蟻塚の土にもしガーネットが含まれていれば、そこはダイヤモンド鉱床の可能性があると考えたのです。
この推測を基に蟻塚の土壌を丹念に調べ続け、見事、砂漠の中に眠っていたダイヤモンド鉱床を発見したそうです。










