心に残ることば

心に残ることばというのは、ちょっと意外なものが多くないですか。
あんまりいかめしい格言めいたものでなく、もっとこう簡単な一行ぐらいのもの。
最近よく思い出すのは、

「わたし、人間が好きなんです」

という一言。
何か心に引っかかっててたまに突然、フッと思い出す。
まるでぼくの心が勝手につかまえて大事にとっておいたみたいに、何年かたった今、じわじわじわと効いてきた。

彼女は弟と一緒にネパールからインドへ旅をしていた。
スポーツが得意そうな、ソフトボールでもしてそうなタイプで、いつも明るく元気だった。
反対に弟はというと、日本によくいるちょっと内気で反抗的な若者、といった感じ。
目つきが鋭く他人に対していつもどこか緊張したところがある。
でもきっと旅をしてるのが楽しいんだろう、姉さんのいうことを、何だよとか、うるせえなあ、とか言いながらもちゃんと素直に聞いている。
きっと旅に出るときも姉さんが、いいからあんたも来なさいっ、て引っ張ってきたんだろうなあ。
そんな様子は日本で閉塞している若者が活力を取り戻していくのを見るようで、とてもほほえましかった。

日本にゴマンといる、無気力なやるせない若者も、彼女みたいな姉さんがいれば幸せなのにね。
そういう意味で彼はとてもラッキーだったのかもしれない。
きっと彼の中で何かが生まれたことだろう。
これから先がきっと違ったものになると思う。

そんなふうに、無気力な不良の弟をかえてしまうぐらいの姉さんだから、やっぱりみててもとてもエネルギッシュだ。
話してるとこっちもなんだか元気が湧いてでてくるようだ。
そんな彼女が、自分のこれまでしてきた旅の話の途中でふと、「わたし、人間が好きなんです」

と、こう言った。
普通に、さらりとそう言った。 
単純な説得力がそこにはあった。
当たり前のようで当たり前でない言葉。
簡単なようで実はなかなか言えない言葉。
素敵な言葉だな、と思う。
そんなふうにすがすがしく言える彼女を、ちょっとうらやましく思った。

さとうりゅうたの軌跡
さとうりゅうた 最初は欧米諸国を旅するが、友人の話がきっかけでアジアに興味を抱く。大学卒業後、働いて資金をつくり、97年4月ユーラシア横断の旅に出る。ユーラシアの西端にたどり着くまでに2年を費やす。

「心に残ることば」への1件のフィードバック

  1. こんにちは、すごく心の温まるお話でした。
    人との出会いの中での何気ない一言って、すごく大きな力を持っていると思います。
    私のおじちゃんが成人祝いの封筒に
    「元気であればいい 健康であればいい がんばりなさい」
    と書いてくれたんです。
    普段そんなこといわないし、頑固なおじいちゃんがこんな、らしくない事をしたので感動しました。

    人間っていいですね

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