パレスチナ2

「24時間の外出禁止令ですか」
聞くと、先日の爆弾テロで8人の死亡者が出たために出されたとのことだ。
私は二人のパレスチナ人の老夫婦がこちらに歩いてくるのを見つけた。
「外出しているじゃないですか」
24時間といっても、一日のうち買い物などに必要な1?2時間は許可が出ているという。
しかし、仕事などには行けないとのことだ。
「だから、ここを離れる人が多いわ」
それが、パレスチナ人を追い出す、ユダヤ人の常套手段だとのことだ。
ヘブロンの地は、ユダヤ人にとってもパレスチナ人にとっても聖地である。
ここには、アブラハムとその息子イサクの墓があるからだ。
イサクにはエサウとヤコブの二人の息子があり、パレスチナ人はこのエサウから出、ユダヤ人はイスラエルと名を変えるヤコブから出ている。
両者にとって聖地であるこの場所を、ユダヤ人はパレスチナ人から取り戻そうとし、パレスチナ人はユダヤ人から守ろうとしている。

道路のアスファルトが黒くこげている。
ここで、車に仕掛けられた爆弾が爆破したらしい。
死んだ8人のうちわけは、ユダヤ人4人にパレスチナ人4人。
どちらが仕掛けたかわからないが、おそらくどちらも相手が仕掛けたと思っているのだろう。
その爆弾テロの後の話を私は聞いた。
爆破が起こってすぐ、家の中からUZIを持ったユダヤ人が出てきて、発砲したという。
UZIは、イスラエル製の高性能で有名なサブマシンガンである。
その男は軍人なのかと尋ねると、違うという。
一般人だとのことだ。
軍人がそのようなことをすれば、問題になるという。
一般人がUZIを持っているのか。
私は、その場から早く離れたくなった。

Aさんはモスク(イスラム教徒の教会)に行こうと言う。
私たちはモスクに向かった。
モスクの入口には、大勢のイスラエル兵がいた。
中に入っても良いかと尋ねると、ダメだと断わられた。
断わられたためくぐらなかったが、入口には空港にあるような金属探知機が備えてあった。
Aさんが、モスクの入口に金属探知機がそなえられたわけを話してくれた。
「初め、このモスクのほとんどはパレスチナ人のもので、ユダヤ人の礼拝所はわずかなものだった。
ある日、ユダヤ人の医師がお祈りの時間にモスクに入り、銃を乱射した。医師はその場で取り押さえられ殺されたが、大勢のけが人や死者をだした」
それ以来、モスクの入口には金属探知機が備えられたという。
「しかし、なぜ私たちパレスチナ人の入口に備えるのだ。銃を乱射したのはユダヤ人なのに」
この事件の後、モスクはユダヤ人の礼拝所がほとんどを占め、パレスチナ人の礼拝所はわずかになったとのことだ。
その医師は、ユダヤ人のあいだでは英雄になっているという。

シナゴーグ(ユダヤ教徒の教会)となったモスクの周りを歩いていたら、Aさんは指こそささないが、あいつを見ろと私たちに言う。
ひとりの初老のユダヤ人が、兵士たちと楽しそうに何か話している。
「ユダヤ人たちにラビ(師)と呼ばれるあの男は、数年前、パレスチナ人を射殺した。裁判で有罪になったのだが、わずか数ヶ月間入獄しただけで出てきたのだ」
Aさんはくやしそうに言う。
「もし、パレスチナ人がユダヤ人を殺したら、数ヶ月の入獄ではすまないだろう」

いとう某 22歳のとき初めて行った海外旅行で日本とは違う世界に衝撃を受ける。まだ見ぬ世界、自己の成長と可能性を求めて旅した国は、5年間で35ヶ国。思い出に残る旅はエヴェレストを見たヒマラヤトレッキング。

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