スペインの長い昼

踊りつづける
熱砂の中で
ひび割れた大地の上で
汗をたらしながら
踊りつづける
漂流の果てのアンダルシアで
カルメンは
欠けてしまった何かを
ギターの旋律や
カスタネットの音色をたよりに
がむしゃらに
求めつづける
ギラギラ照りつける太陽の下で
狂う
マタドールは
貴公子のように
息の根を止める
熱い砂漠の上で
華やかに舞ってみせる
貫かんとする猛牛を
おびきよせてはひらりとかわし
一撃を狙う
互いに間合いを計りつつ
ひたとした静寂を
マタドールが一気に破る
巨体が朽ちた
猛牛は 鼻息も 荒々しく 崩れ落ちる
ワッと歓声があがる
人々は白いハンカチをくるくるまわして喝采する
熱気のこもったスペインの長い昼は
人や土や空気や全部を冷ましながら
ゆっくりと暮れてゆく

さとうりゅうたの軌跡
さとうりゅうた 最初は欧米諸国を旅するが、友人の話がきっかけでアジアに興味を抱く。大学卒業後、働いて資金をつくり、97年4月ユーラシア横断の旅に出る。ユーラシアの西端にたどり着くまでに2年を費やす。

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