地平線

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初めて地平線を見たのは、19の夏の頃だったか。
もう、10年以上も前のことになる………。

それまで自分は、地平線なんて見られないものだと思っていた。
こんな小さな国じゃあ。
大地の少ない、この国じゃあ。

買ったばかりのバイクで、日本を走った。
北へ北へ向かった。
ひたすら北へ向かって駆け抜けた。

北海道には、地平線があった。
果てしなく何もなく、何もないってことがこんなにも気持ち良く、爽快であるということを初めて知った夏だった。
地球を見た気がした。

それから何年もたって、その間に何度も地平線を見た。
なかには、地平線ばかりの国もあった。
当たり前のようにそこに大地が広がっていた。

もう久しく、地平線なんてものは見ていない。
広い景色を見ていない。

あんまり長く窮屈な所にいつづけると、世界は広いんだ、っていうことを忘れてしまう。
そんな当たり前のことにすら、気付かなくなってしまう。

ぼくはいま、地平線が見たい。
抜けるような青空と、果てしなく広がる茶色い大地、青く萌える草原、銀色の山脈、大自然の創りだす色彩の奇跡、宇宙。
そんなものに、抱かれたい。
考え付かないぐらい大きなものに抱かれたい。
そしてその中に溶け込んで、自分というものを無くしてしまいたい。
地平線の向こうを越えて、果てしないものと同化したい。

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