青銅器の龍シルバーリングがついに完成しました。
構想からほぼ1年、導かれた様々な出会いの末、ようやく完成に辿り着くことができました。
多忙の中、リングデザイン作成に尽力いただいたデザイナーの山本さんへの感謝の気持ちは私の少ない語彙力ではふさわしい言葉が見つかりません。
思い返せばすべての始まりは昨年3月に訪れた上海でした。
昔の映画や空想小説に描かれた近未来都市を連想させる上海。
その中心地にある博物館にて、3500年以上も前に作られた古代青銅器の遺物を目にしたときの衝撃は今でも鮮明に思い出すことができます。
これまで旅先で博物館と聞けば小さなところへも足を伸ばし、80余国で見てきた遺構や遺跡の数々は数え上げることができないほど遺跡好きの私ですが、これに比肩するほどの衝撃は他に一つしかありません。
そのもう一つとは欝蒼と茂ったジャングルの中から朝もやに包まれたアンコール遺跡群を目の当たりにしたときです。
遺跡と遺物を同等に論じることは愚行かもしれません。
しかし心の琴線に触れたというか、今まで隠れていたスイッチが点灯したというか、深層から湧き上がってくる感動は同じようなものだと思います。
私は絵画にはまったく疎いのですが、絵画を理解する人がすばらしい名画に出会ったとき感じるものはこれに近いにではないだろうかと思っています。
古代人の残した祭礼用青銅器は現代人の我々が見ても、その高度な技術力と独特な造形には感嘆の声を上げずにいられません。
隙間なくびっしりと埋め尽くされたおどろおどろしい文様、威嚇しているような2対の目。
それは当時、信仰の対象にあった魔神の顔なのか、それとも部族のトーテムとして崇められていた動物の姿なのか、今ではうかがい知れませんが、
特殊な神性を与えられていたものであったことは間違いないでしょう。
これらの青銅器に出会ったとき、心の底から何かに呼びかけられたように感じられました。
上海を訪れた頃は今後のクロマニヨンの展開と方向性を模索していたところで、この青銅器に出会って何か小さな糸口が見つけられたように思えました。
この前提がなければ、これらの青銅器もただ古代の芸術品として素通りしていたに違いありません。
物事には調和する時(タイミング)というものが存在するのでしょう。
私がこのとき感じたのは、これらの青銅器を産み出した古代人の想像力と造形力に敬意を払いつつ、新しい風を吹き込んで現代にこのデザインを甦らせてみたいということでした。
帰国後まもなくして友人を通じて出会ったデザイナーの山本さんにこの話をしたところ、それは面白そうだと興味を持っていただき、デザインをお願いすることになりました。
これもタイミングの一つだったのだと思います。
そうしてついにこのリングが完成しました。
発売前に最後の総編集をすべく明日から上海に旅立ちます。
またどんな出会いがあるか楽しみです。