カレン族のタブーとルール

自らを森に住む人、2番目と呼ぶ

カレン族の村を2つ訪問しました。
ひとつは銀細工の村、もうひとつは電気も水道もない奥地の村です。

カレン族にはいくつかのグループがあります。

主要なグループはスゴーカレン、ポーカレンの2つです。

銀細工の村はスゴーカレン、奥地の村はポーカレンです。
この他のグループの中でも特に有名なのがパダウンで、首長族の名でも知られています。

スゴーカレンは自分たちを「パガニョー(意味:森に住む人)」と呼びます。
ポーカレンは自分たちのことを呼ぶとき、「プローン(意味:2番目)」と呼びます。

スゴーカレンとポーカレンは同じカレン族でも言葉はかなり違うようで、互いの意思疎通は難しいようです。

カレン族銀細工の村周辺に広がる田園風景
カレン族銀細工の村周辺に広がる美しい田園風景

奇妙なルールやタブー

山地に住むカレン族は焼畑農業により農作物を育て、基本的に自給自足の生活を送っています。
多くを望まず、自然と密着した平和な暮らしです。

優しくもあり、厳しくもある自然と共に生きる暮らしのなかでは、日本に住む私たちからすると一見奇妙にも思えるルールやタブーなどがたくさんあります。

たとえば、夕刻に時を告げた鶏は不吉なものとして即刻殺されなければならないというルールがあります。

また、オス同士、メス同士で性行動をした犬も、同じように災いをもたらすとして殺されます。
こうしないと村に大きな災い、事故などが起きると信じられています。

災いは人間を戒める精霊の怒り

一方、農作物の不作や村に災いが起きたときなどは「運が悪い」のではなく、誰かルールやタブーを破ったものがいて精霊の怒りに触れていると考え、「犯人」を探し出すことになります。

精霊は原則「善」であり、災いは邪まな行いをした人間を精霊が戒めるために引き起こすとカレン族は信じています。

こうした厳格なルールが、山の中の暮らしに秩序と倫理観をもたらしているように見えました。

シャーマンの役割

奥地のポーカレンの村で、シャーマンに引き合わせてもらいました。
60歳を少し過ぎたくらいに見える小柄な男性でした。
特別な衣装をまとっているわけでもなく、教えられなければシャーマンだとは絶対にわからない、外見はごく普通の村人でした。

シャーマンは人と、精霊や魂の間を取り持つ存在です。

病気になると、カレン族の人々はその原因を探します。
症状がどのようなものであれ、病気を引き起こしている何らかの霊的な力があると考えます。

その人が知らずに森の精霊の怒りを買い、怒った精霊に魂を奪われて病気になったのかもしれません。
あるいは、野生動物や雷鳴に驚いて、魂が恐怖で逃げ出したのかもしれません。

治すにはまず、その背後にある霊的な原因を見つけて正さなければならないと考えます。

シャーマンは好ましからざることが起きた時、正しくあるべき姿に戻す役割を担っています。

屋久島の縄文杉
畏敬の念を抱かせる屋久島の縄文杉

日本にも通じる自然への敬意

ここまで紹介したルールやタブーは、現代の私たちには奇妙に映るかもしれません。
しかしながら、自然との向き合い方には、身近に感じられるものもあります。

スゴーカレンには、森や水を利用する前に、それらを守る精霊に許しを求めるという考え方があります。
許しなく使うことは「盗むこと」と捉えられます。

日本にも、よく似た伝承があります。
福島県では、大きな枝が二股や三股に分かれた木を、山の神が腰を下ろして休んだり、遊んだりする場所「山の神の遊び木」と呼び、むやみに伐採してはいけないとされていました。

どうしても伐採する必要があるときは、お神酒を供え、山の神の許しを請う儀式を行ってから手をつけたと言われています。

木を伐採する前に、そこにいると考えられるものの許しを求める。
自然の恵みを、人間が勝手に持ち去ってよいものとは考えないところに、共通する感覚があるように思います。

初掲:2004年7月
改訂:2020年5月
追加改訂:2026年9月

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