カレン族シルバー製作風景

労をいとわぬ手仕事から作り出される

カレン族シルバーアクセサリーはすべてカレン族の手仕事によるもので、小さなビーズのひとつひとつにいたるまで丹念に作られます。直径1mm、長さ2mmほどの極小シルバービーズを手に取り目に近づけてみると、きっと驚くに違いありません。その小さなビーズにはさらに小さな直径1mmにも満たないカレン族の刻印が2つも押されています。根気のいる作業と要する時間を思うと気が遠くなりそうです。

直径1mmほどの極小シルバービーズに穴を穿つカレン族シルバーの職人

手仕事の原点が脈々と受け継がれる

カレン族の銀細工の村に足を踏み入れると、コンコンと槌を打つ音が絶え間なく四方から聞こえてきます。村の周りの静けさとは対照的に、ここでは人の活気を音で感じられます。音のする方へ近づくと、高床式の家の影になった床下で何人かで集まって黙々と作業を繰り返しているのが見られます。男性もいますが女性の方が圧倒的に多いです。まだ幼い面影を残した少女たちが、大人に混じって小さな木槌を振り上げています。もっと幼い子供たちはできあがったビーズを糸に通す簡単な作業を任されているようです。白の民族衣装を着ているところを見るとまだ結婚前の少女たちであることがわかります。

この銀細工の村ではどの家庭も何らかの銀細工の仕事に携わっています。赤ん坊の頃から作業する親を見て育ち、少し大きくなって親や兄弟からやり方を学び、銀細工の作業を担っていきます。こうしてカレン族伝統の技術は親から子へと受け継がれていきます。

カレン族銀細工の村周辺に広がる美しい田園風景

カレン族シルバーの工程

初めは粒状だった純銀からカレン族の刻印が押されたひとつのビーズになるまでにはいくつかの工程と何人かの手を経て完成にいたります。

1. 銅を加える

シルバーはそれ自身では非常に柔らかすぎてアクセサリーなどの加工に向きません。そのため、耐久性や強度を補う目的でごく少量の銅が加えられます。

秤に乗せられた純銀

2. 鋳型に流し込む

容器に入れられたシルバーはオレンジ色の液状になるまで溶かし熱された後、長方形の鋳型に流し込まれます。冷却するためシルバーを流し込まれた鋳型が水を張った水槽の中へ突っ込まれると、水は激しい音とともに気化し、あたりは水蒸気の白い煙で満たされます。煙が消え去った後、水槽の中から銀色の塊が現れます。

熱し、溶かした銀と銅の液体を流し込む鋳型

3. 細く延ばす

塊を鋳型から取り出し、完全に冷め切ったら、次の作業に取りかかります。大小の穴が順番に並んだ金属製の形板を用意し、塊を圧延機に入れ、最初は形板の大きな円を通して細長く引き伸ばし紐状にします。

銀の塊に圧力をかけ徐々に延ばし細くする圧延機

4. 紐状にする

これを再び圧延機に入れ、今度はやや小さめの円に通して先ほどより少し細めの紐を作ります。順に円を小さくしながらこの作業を何度も繰り返し、必要な太さと厚さになるまで続ける。

細く延ばした紐状の銀をより小さな穴に通すことでさらに細く延ばす工程

5. 一定の厚さに延ばされたシルバー

こうしてできあがったシルバーの紐は束ねられ、次の作業を静かに待ちます。

次の工程を待つ束ねられ紐状の銀

6. 刻印を刻む

カレン族の刻印は先端に刻印の凹凸がある鉄製の棒を金槌で打ち付けることによって刻みこまれます。打ち付ける力の強さ、熟練の度合い、先端の磨耗具合などによって刻印は微妙に異なってきます。

銀板に規則正しく正確に打ち込まれる刻印

7. 黒化する

刻印を押しただけでは凹みが確認できるだけで、あの美しい紋様を見ることはできません。紋様を浮かび上がらせるために、塩素系漂白剤のハイターが用いて黒化します。

塩素系漂白剤ハイターをカレン族シルバーに塗布後、光にあてることで塩素と銀が塩化反応を起こし黒化する

8. 磨く

シルバーは塩素に触れると化学反応を起こし、表面に黒い化合物(塩化銀)が付着します。この性質を利用して陰影をつけ、紋様を際立たせます。その手順はまずシルバーに琥珀色の黒化液を塗って乾燥させた後、次にスポンジで黒化したシルバーを磨きます。すると凹凸の凸の部分の黒い化合物が取れて、凹の部分のみが黒く沈着します。こうして刻印された紋様がくっきりと現れるのです。

黒化したカレン族シルバーの表面を研磨スポンジで擦ることで陰影を際立たせる

9. 立体にする

半円球形や円球形のビーズを作るには大小さまざまな窪みを持つブロンズの台が使われます。まずシルバーのパーツをくぼみの上に置き、次に先端がなめらかな丸みを帯びた鉄棒を垂直にあてがい、金槌で打ち付けます。これによってシルバーパーツはくぼみの形にあわせて変形し、平面形のパーツがなめらかなカーブを描いた立体型に生まれ変わります。

半円球形など立体形ビーズを作るために用いられる大小様々な窪みを持つブロンズの台

10. 球体にする

1個の円球形のビーズを作る場合は、上の手順で作られた同じ大きさの半円球形のパーツ2つが使われます。ピンセット状のもので2つのパーツを向かい合わせに固定し、バナーで熱を加え溶接(銀蝋接合)します。溶接した後、接合部をなめらかにして完成です。

半円球形ビーズ2つを合わせ球体形ビーズを作る工程

11. 均等のサイズにする

刻印の押されたシルバーパーツを均等のサイズのビーズにするにはひとつひとつ手作業で行われます。先の尖った細い針金状の鉄棒で軽く円筒状に曲げられたシルバーパーツをすくい取り、鉄棒に刺したまま溝の入った鉄製の台に置きます。この上に、四角の鉄製または木製の重しをかぶせ、シルバーパーツを溝の上で転がし、何度も往復させます。これによってパーツはきれいな円筒状になり、ビーズが完成します。また溝の形によってビーズの両端はすぼまったり、くぼみがつけられたりします。

シルバービーズを均等の大きさ、形にする工程

12. 紐に通す

このようにひとつひとつ丹念に作られたビーズを糸に通してすべての工程が完了です。

ひとつひとつ丹念に作られたビーズを糸に通して紐状にする工程

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