世界で一番美しい海

世界で一番美しい海とはどこであろうか。
そんなものは個人的な主観によって違うなんてことはわかっている。
それは実に曖昧で、個人的な趣味というのもあるし、さらにそこでの体験が楽しかったとすれば、おのずとそこの海の印象もまた良くなるものだ。
私的な意見を言わせてもらえば、今まで訪れた場所のなかでは、沖縄の石垣島や西表島の海がとても印象に残っている。
こんなにも、深い青と、エメラルドグリーンの鮮やかな海が存在するものなのかと驚いた。

そしてここ、タンザニアにも美しい海が存在する。
ある旅行者は、
『あれほどきれいな海岸線は見たことがない』
といっていた。
それはザンジバル島にある。

ザンジバルは今ではタンザニアの一つの地域であるが、1964年まではザンジバル共和国という主権国家だった。
そのためか、あるいは観光客への記念のためか、島にはイミグレーションがあり、ザンジバルの入国スタンプを押してくれる。
ダルエス・サラ?ムからフェリーに乗に2時間も揺られると着くが、他に貨物なども乗せるため、実際には半日はかかる。

今では東アフリカの代表的な観光地でもあるザンジバル島は、ケニアのラム島などと同じくムスリムの島だ。
ストーンタウンと呼ばれる一帯は、その名の通り、石でできた街であり、路地は入り組みすぐに迷子になる。
しかし、たまには迷子になるのもまた楽しい。
幼い女の子は黒い布をすっぽりとかぶり、カメラを向けると手で顔を隠す仕草がかわいい。
しかし逃げ出すわけではなく、距離をとって私の様子を伺っている。
好奇心には勝てないようだ。

そんなストーンタウンの街並みには魅了されたが、ここは大観光地だけあり、トラブルは絶えなった。
宿の客引きがうざったい。
インド並だ。
とにかく久しぶりにこの手の客引きにあい疲れる場所だった。

とにかく私は宿を決めて、そこから日帰りでパジェビーチというところまで足の延ばした。
そこには、日本人女性の経営する宿があり、そこに行くと、
『泊まらなくてもいいから、ゆっくりしていって』
と歓迎してくれ、私はビーチソファーを借りることにした。

そこから見える海岸線は全く絵になった。
引き潮のときは、真っ白い砂が沖の向かってずっと続いている。
紺碧の空と、白い砂浜というのはこういうのを言うのだろう。
そこで暮らす人たちは、引き潮の間にその砂の中から、貝を捕っているようだった。

そして役目を終えた木造の小さな船が、砂の上で朽ちようとしている。

葉祥明という絵本作家がいる。
北鎌倉に美術館をもつ作家だ。
彼の書く絵のなかに、青い海と白い砂に、木の船はポツンと打ち捨てられているものがある。
まったくそれと同じ世界だった。

私もサンダルで、白い砂の上を、どんどんと沖へと進んで写真を撮った。
2,3キロはそれが続いているように思えた。
夕方になり、潮が満ちてくると、今まで白い砂だった部分がみるみると青い海に変わっていく。
さっきまで歩いていた場所が、もう水にかわり、海は宿の目の前まで来ている。

私の過ちは、そこに泊る手配をしなかったことだ。
ビーチの宿は安くても1泊30ドルくらいするのだが、それを惜しんでしまった。
そのことは後悔した。

私が世界で一番美しい海を挙げるとしたら、ここを挙げるかもしれない。
そして、もしそこに泊っていたら、私は世界で一番美しい海に沈む、世界で一番美しい夕日を見ることができたかもしれない。
そのことを今でも後悔している。

鉄郎の軌跡
鉄郎 初めての海外旅行は22歳の時。大学を休学し半年間アジアをまわった。その時以来、バックパックを背負う旅の虜になる。2002年5月から、1年かけてアフリカの喜望峰を目指す。

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