05May10
「やっぱ、行くんっすか?」
翌日の朝、荷造りをしている智に安岡が声をかけた。
「ああ。今日、国境を越える」
ベッドの上に散らばった衣類を片づけている智を、安岡は、少し寂しそうな表情で眺めていた。
「でも、本当、イミグレ―ションでは気をつけて下さいよ。自分、かなり入念にバックパックを探られましたんで」
「そうだね……。見つかったらバクシーシじゃ済まないだろうからね。ちゃんと隠しておかない...
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10May10
安岡は、うろたえながら再び深々と頭を下げた。智は、いいよ、いいよ、とそれを制すると、思い出したように安岡に尋ねた。
「あっ、そうだ。安岡君、結局この後、どこ行くか決めたの?」
安岡は、いえ、まだっすけど……、と口籠った。
「もし昨日言ってたマニカランへ行くんだったら、町の入り口に、マニカラン・コーヒーショップっていう店があるから寄ってみてよ。アナンとプレマっていうインド人夫婦がやってる...
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15May10
国境までの乗り合いバスを拾いに行く途中、ゲストハウスの中庭では相変わらずイギリス人の老婆が庭を眺めながら紅茶を啜っていた。目の前を智が横切ろうと、まるで無関心だった。一体あと何年、彼女はああやって紅茶を飲み続けるのだろう? ひょっとしたら永遠にあのままなのかも知れない。彼女やそれに関わる周りの物質は、彼女とともに時間の経過を無視しながら永久に存在し続けていくように思えた。彼女達は、移ろいゆく周...
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20May10
智は、その内の一つを手に取った。それは、心路がデリーを出る時に分けてくれたチャイナホワイトだった。少し黄ばんだ白い粉が、紙の折り目に沿うように包まれている。智は、再びそれを包み直すと他のものと同じように窓から放り投げた。放り投げられた包みは、あっという間に流れゆく景色の中へと呑み込まれ、見えなくなった。そして最後に、袋の中の一番奥に残されたもう一方の紙包みを、智は指先を使って引っ張り出した。包...
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