05Sep08
「見ないんですか?」
奈々がそう尋ねる。
「何だか、機会を失ったというか、噂を聞いてたら気が重くなって行きそびれたんだよね。
見たいとは思うんだけれど……。聞く所によると、タージ・マハルは確かに素晴らしいそ
うなんだが、そこにいるインド人が鬱陶しくて仕方ないらしいね。もう俺は、今、インド
人には疲れ切ってる所だから、そういう所にはなるべく近寄りたくないんだよ」
「そんなにひどい所なんですか?」
...
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10Sep08
「あっ! そういえば言ってましたよ」
智は、祈るようにして次の言葉を待った。
「建さんって人も智さんと一緒だって」
ほっと智は胸を撫で下ろした。どうやら幸恵はあのことを言わないでおいてくれたらし
い。しかしすぐさま、谷部には言っているかもしれないと思い、二人がベッドの上でそん
な話をして笑い合っている所が自然に想像され、智は、再び激しい嫉妬に襲われるのだっ
た。
「建さんはどこにいらっしゃるん...
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15Sep08
「分かりません。でも、どうしても来たかったんです! あんまりインドのことは詳しく
ないし、どうしてだか良く分からないけど、どうしても来たくって……。あっ、そうだ! テ
レビを見たからかも知れません。ガンジス川の夜明けをたまたまテレビでやってるのを見
て、それを見てたら、何だかその景色のあまりの迫力に動けなくなっちゃったことがあっ
て……。こんな景色を見てみたいなあ、なんて思ったんです。私、朝日すら...
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20Sep08
奈々は、言葉では表しきれないもどかしさを全身で表現しながら、何とか必死にその素
晴らしさを智に伝えようとしていた。
「ああ、俺もガンガーに昇る朝日は見たよ。確かに凄いよね。あんな景色は初めてだった」
智は、そう言いながらも奈々程には感動できていない自分に気が付いて、少し暗い気分
になった。そして、もう一度その光景を見てみたいと、強く思った。
「そうですよね! あんなことが日常的に毎日繰り返されて...
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25Sep08
ゲスト・ハウスのレセプションの前で、ゲンに出会った。奈々と一緒にいる智は、嫌な
所で会ったなと思った。すると案の定ゲンは、二人が一緒にいるのを訝しみながら、よお、
奈々、何やってんだよ、と言った。奈々は、別に、と言ってスタスタとゲンの横を通り過
ぎた。ゲンは、チッと舌打ちをして、智の顔を睨みつけた。智は、笑ってごまかしながら
その横を通り過ぎた。
「あの人達、ちょっと失礼ですよね」
奈々は言った...
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30Sep08
思いもよらない突然の問いかけに、智は、思わず声が裏返ってしまった。
「谷部さんがね、言ってました。智はいい奴だって。ああいう奴は今どき珍しいって。私、
谷部さんがそうやって言うのを聞いて、智さんって、一体どんな人なんだろうな、ってず
っと思ってたんです。デリーに来たら会えるかな、ってずっと期待してたんです。そした
ら着いたその日の内に出会えちゃって、しかも、私の想像してた通りの人で、私、もう一
目...
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