05Aug08
智は深い絶望を感じた。谷部さんが幸恵のあの肉体を……。そう考えると、いても立っ
てもいられなくなり、智は狂おしく煩悶するのだった。
「智さん、智さん、一体どうしたんですか?」
放心状態の智を安代は現実の世界へと呼び戻した。
「良かったら、お部屋に入りません?」
智は、何だか良く分からないまま二人に連れられて部屋の中へと入っていった。一昨日
の晩、皆でボンをしたこの部屋だ。建や、ジョージ、谷部や...
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10Aug08
「智さん?」
下を向いて顔を引きつらせている智に向かって安代が声をかけた。智は、怒りに燃えな
がら顔を上げた。そして精一杯穏やかに、ああ、たまにね、と言った。
「そうですか……。やっぱり長期で旅してる人は、みんなやってるものなんですね」
安代が言った。
「どうして? 何かあったの?」
「いえ、特に何かあった訳ではないんですけど、あの人達が、やったことないんなら絶対
やった方がいいって言うから…...
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15Aug08
「智さん、って言うんですか。俺、ヤスって言います。で、こいつは、ゲン」
角刈りは、最初に会った時と同じように顔をひくつかせる妙な笑い方をした。
「まあ、ちょうど良かったですよね。また今度、って言ってた所ですから。じゃあ、早速
始めましょうか。マリファナ・パーティを!」
マリファナ・パーティ! おいおい、勘弁してくれよ、と智は心底げんなりした気分に
なった。しかしそれは表に出さずに、笑顔を作って...
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20Aug08
部屋にいる四人全員が、無言で智の指先に注目している。特にヤスは喰い入るようにし
て見入っている。部屋の中はしんと静まり返っており、智は、緊張して背中に冷や汗が流
れるのを感じた。悪戦苦闘しながら、ようやくジョイントペーパーを一枚取り出して、さ
あ、巻こうというその時、指先が震えているのに智は気が付いた。ヤバイ、と思い、何と
か抑えようとするのだが、そうすればする程指先は震えて言うことをきかない。二...
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25Aug08
結局その後は、ヤスの巻いた一本のジョイントを四人で回し終えた所で終了した。ヤス
が大口を叩いて作ったそのものは、雑で、巻き方が悪いため途中で何度も火をつけ直さね
ばならないようなものだった。やはりガンジャそのものの質もそんなにいいものではなく、
いくら吸っても智はあまり効き目を感じることができなかったが、ヤスとゲンの二人は、
大げさに、ああ、キマッた、ああ、ブッ飛んだ、を繰り返し、ゲンなどは、露骨...
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30Aug08
次の日、智は、パキスタン大使館へビザの申請をしに行った。もう、一刻も早くデリー
を出たかったからだ。昨日の一件が相当堪えた。デリーに着いたばかりの頃は、しばらく
のんびりしていようと思ってはいたものの、どうやらデリーは智には合わないようだった。
どうもここに来てからというもの、精神的にも肉体的にも不安定な状態が続き過ぎている。
これ以上いると、ますます気が滅入っていきそうな気がした。しかし、ビザの...
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