05Jun08
「俺だって、人の為になんて到底生きられない。昨日も話したけど、俺は、人のことなん
て何も顧みず、自分のためだけに生きてきた男だ。今さらそんなこと簡単にできるもんじ
ゃない。いや、正直に言うと、半ば諦めかけているのかも知れないな。だって、人のため
に命を捧げるなんて人間業じゃないだろ。神の領域だ。そんなことは。誰もができること
じゃない。でも、俺はそうありたいとだけは思っている。少なくとも、そう思お...
続きを読む »
タグ:
10Jun08
「何かって……、ドラッグのことですか?」
「ああ」
「やってるって言ったら、今吸ってるこのチャラスと、後は、アシッドぐらいだと思うん
ですけど……」
「違うよ。もっと他のもの」
「後は……」
智はためらいながら答えた。
「ブラウンを…少し……」
建は、やっぱりかというような表情で智を見た。
「それだよ、智。ブラウンだよ。禁断症状だ」
智は驚いて建を見た。
「えっ、禁断症状? だってそんなに言...
続きを読む »
タグ:
15Jun08
「まあ、見てる分にはそんなにしょっちゅうやってる訳じゃないから、まだ大丈夫だろう
けどな。飯も喰ってたし。食欲はあるんだろ? だけど、このままエスカレートしていっ
たら確実にひどいことになるっていうのは確かだぜ」
「そうですよね……。でも、ブラウンの感覚って、俺、驚く程好きなんです。あんな精神
状態で一生いられたらいいのに、って思うこともあります」
建は、残りのジョイントをフィルターの紙の手前ギ...
続きを読む »
タグ:
20Jun08
次の日の朝、建と智はニューデリー駅で幸恵を見送った。三人は、それぞれの住所を交
換し合い、いずれ手紙を書くことを約束した。幸恵は、大きなバックパックにまるで背負
われているようになりながら、群集の中へと消えていった。消え入るほんの少し前、こち
らを振り向いて手を振ったがそれは人混みに掻き消され、何とか最後の別れをしようとい
っぱいまで伸ばした手の平が、たくさんの人達の頭上でしばらくの間揺れていた。...
続きを読む »
タグ:
25Jun08
「ええっ……、マジですか……? それはちょっと辛すぎますよ。俺、いきなり独りぼっ
ちになっちゃうじゃないですか。建さんまで今日行ってしまうなんて……」
智は落胆して下を向いた。建は、智の肩に手を回しながらこう言った。
「まあ、そう言うなよ。俺だって寂しいんだぜ。みんなそうさ。智だけじゃない。ほら、
幸恵ちゃんだって泣いてただろ? あの子なんて来たばっかりだし、それでまた一人で知
らない所に行くん...
続きを読む »
タグ:
30Jun08
二人はメインバザールの雑踏をしばらく歩くと、オートリキシャを停めた。建は、リキ
シャドライバーとバスステーションまでの値段交渉を始めた途端、相当吹っかけられたら
しく、ふざけるなよ、お前、と言ってオートリキシャのボディを、バン、と強く叩いた。
そして建の方から半ば強引に値段を決めつけると、ドライバーは、両手を広げて渋々それ
を受け入れ、エンジンをかけた。智は、早速やってるよ、と心の中で呟きながら、...
続きを読む »
タグ: