05Apr08
「この人達、何してるんですか……?」
幸恵は、きょとんとした表情で、呆気にとられながらそう言った。
「ハハハ、何って、何してるんだろうね? きっとみんな旅人だから旅の途中だと思うん
だけど、ハハハハハ」
「それはそうですけど……」
「みんな、長くここにいる人達ばっかりなんだよ。上の方の階になればなる程、一体何し
てるのか分からない人が多いよ。中には何ヶ月、って人もいるんじゃないのかな」
「何ヶ月...
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10Apr08
智は、自分で書いたシバ神のことを思い出して、しまった、と思った。幸恵は、再び立
ち上がると扉に近づいて、それらの落書きの一つ一つに目をやった。
「ええっと、ドゥー・ノット・イート・ホール・パパイヤ・バイ・ユアセルフ、ううん、
パパイヤを一人で丸ごと食べるなってことですかね。えっと、こっちは……。夕暮れに屋
上にのぼって、日の沈むのを眺めながらジョイントを吹かす、人生はそんなに悪くない、
ってこれ、...
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15Apr08
智は、少しの間考えてから口を開いた。
「そうだな……。何となくなら、分かるような気がするよ。それは……、例えばバラナシ
にいた時にガートでさ、人を火葬している所を見たんだよ。実際に見る前は、やっぱりさ
ぞかしグロテスクで恐ろしいものなんだろうなと思っていたんだけど、実際見てみたらそ
うでもなかったんだ。積み上げられた薪の間から炎に包まれた人の頭が覗いていて、それ
が脱力した感じで、ダラッと下に垂れ...
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20Apr08
「うわぁ、凄くきれい。これはどこの写真なんですか?」
智は、身を乗り出して写真を覗き込んだ。幸恵のそばに寄ると、汗の匂いと肌から発せ
られる熱気が、智の鼻腔を刺激する。それは、ある種、官能的な香りであった。智は、そ
のまま幸恵の肉付きの良い首筋に噛み付いてしまいたいという動物的な欲求にかられた。
幸恵の首筋にかかる後れ毛が、汗で濡れて肌に貼り付いている。白い肌には、玉のような
汗がキラキラと輝き...
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智は、再び幸恵の方に体を寄せながら写真を覗き込んだ。
「ああ、それはチベットの人達に"精霊の宿る湖"と言われている湖なんだ。山の間にあ
って、それはその山の上の方から撮った写真なんだけど、そこから見ると本当に神秘的で、
なぜ精霊が宿ると言われているのか良く分かったような気がするよ」
今、智はほぼ幸恵に密着している。肩の辺りから覗き込むように写真を見ている。幸恵
の髪が智の頬を軽くくすぐる。汗と体...
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25Apr08
智は、あいててて、と頭を押さえながらベッドの上の幸恵を見上げた。床に転がったお
かげで、全身砂まみれになっている。見上げた幸恵は、小窓から差し込む強烈な日光を背
負っていてとても眩しく、智は直視することができなかった。幸恵から必死で目を背けて
いる智のその様子が、より一層、智を惨めで卑小なものに見せていた。
「大丈夫ですか?」
警戒しながら幸恵は智にそう尋ねた。智は、手の平で日光を遮りながらそれ...
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30Apr08
智は、しどろもどろになりながら何とかごまかそうとしたが、幸恵が、部屋の扉を少し
開けて、智さん、どうかしたんですか? と顔を出したので、全ては御破算になった。建
を見て幸恵は、ちょっと驚いたような表情をしたが、すぐに部屋の外へ出て、こんにちは、
と頭を下げた。建は、ちょっと戸惑いながら、ああ、こんにちは、とだけ言った。
「智さんのお知り合いの方ですか?」
幸恵は建に尋ねた。
「ああ、前にバラナシ...
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