05Nov07
建は智の話をじっと聞いていた。そして少しの間考えてから言った。
「智、ちょっと考え過ぎじゃないか? 何でそんな風にややこしく考えるんだよ? この
風景は、ただ、インドの美術館に日本の浮世絵が飾ってあってそれを商用か何かで旦那と
一緒にインドに来てる奥さん連中が暇つぶしに見に来てる、それだけのことだろ? そり
ゃあ確かに変な感じはするだろうけど、そんなこと言い始めたらキリがないぜ。街歩いて
るだけ...
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10Nov07
美術館を出ると建が、もう一ヶ所見てみたい所があるんだが行ってみないか、と智を誘
った。智は、もちろん断る理由も無く、建さんが行きたいのならと快く返事をした。次に
二人が向かったのは民芸博物館という所で、そこには昔から現代に至るまでのインドの
様々な生活様式や育まれてきた独自の文化が、たくさんの民芸品やジオラマによって再現
され展示されていた。
建は、旅をしながらアクセサリーや小物などをその土地土...
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15Nov07
夜のメインバザールは昼間の暑さこそ和らいでいたものの、人の熱気や地面の放射熱や
車やバイクのクラクションが作り出す悶々とした温気は、一向に収まる気配を見せなかっ
た。却って夜になって周りが暗くなった分、裸電球や蛍光灯の心もとない灯りに照らし出
されているそれらの風景が、一層異様な物のように思われる。
智は、建と食事をとった後、そんな温気の中を泳ぐように歩いていた。
「しかし何とかならないですかね...
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20Nov07
「はあい、だれ?」
建は、智の方を見て、いるみたいだぜ、と微笑みかけると部屋の中に話しかけた。
「俺だよ、建だよ」
「ああ、建か。入ってきなよ」
建は、智に目で合図をするとドアのノブを捻った。智は、無理矢理笑顔を作りながら、
建に続いた。
「よお、建。デリー出たんじゃなかったのかよ。明日だったか?」
谷部は、そう言うと、建の後ろから部屋に入ってきた智に気が付いて、身を乗り出しな
がら智を覗き...
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25Nov07
「ジョージは、ゴアでディーラーやってた奴で、これがまた、いいネタ持ってんだよ。最
近俺達はすっかり普通の旅行者になってたから、観光ばっかでしばらく手に入んなかった
んだよな。そこでこの宿来たら、色んな奴いるから退屈しなくってさ。で、ジョージに出
会ったって訳だ。さっそく色々分けてもらって、毎日天国だよ、全く、ワッハッハ」
谷部は、顔の艶を一層輝かせながら豪快に笑った。そう言われてみれば、部屋の中...
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30Nov07
谷部がジョージに向かって英語でそう言うと、ぼんやりと天井を眺めていたジョージは、
嬉しそうに、O・K、と言って谷部の方に向き直り、ポケットからピンポン球ぐらいの大
きさのチャラスの固まりを取り出して、谷部に向かって放り投げた。谷部は、サンキュー
と言ってそれを受け取ると、手早くほぐし始めた。
ほぐしながら英語でジョージと何か喋っている。発音こそ日本人独特の固さがあるもの
の、谷部はかなり英語を話...
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