05Oct07
次の日遅く目覚めると、思いのほか体は軽く気分も晴れやかだった。部屋の中の大気は
依然重く蒸れていたが、それでもなお、智は、顔を洗うため足取りも軽やかに洗面台へと
向かった。廊下に出ると、上半身裸の欧米人が、智と同じようにタオルを首からかけて歯
を磨いていた。智は、にこやかに彼に向かって声をかけた。彼は、歯を磨きながら智の方
に目を向けてそれに応えた。
清々しい朝だった。何だか周りにいるみんなが友...
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10Oct07
「ところで建さん、部屋はどこなんです?」
「ああ、俺、ここに泊まってるわけじゃないんだ。もうちょっと裏手のところにある宿に
泊まってて。あっそうだ、ヤベ君がいるんだよ、ここに。彼に会いに来てたんだ。ほら、
知ってるだろ、谷部君」
「ああ、バラナシでババ・ゲストハウスに泊まってた人達の内の一人ですよねえ。覚えて
ますよ。あんまり話をしたことはないけれど。あの人がここにいるんですか?」
「そうなんだ。...
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15Oct07
智が初めて建と出会った時、彼は、側頭部にバーコードのタトゥーの入ったフランス人
のドラッグディーラーと一緒だった。智がテラスで手紙を書いていた時に、建が、ボール
ペン貸してくれる?、と声をかけて来たのだ。その時智は、インドに入ったばかりで、い
かにもインド慣れしている建の風貌にちょっと緊張感を覚えたが、彼が声をかけて来た時
のその微笑み方がとても印象的で親しみやすいものであったため、その申し出に...
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20Oct07
――― ああ、俺は、一生この「生活」というものから逃れられないのか? 永遠にこ
の「日常」という化け物に支配されながら生きていくしかないのだろうか……?
退屈でつまらない、日常! 憎むべき現実!
何の想像力も必要としない忌々しい、日常!
こんな遥か彼方までやって来てなお、日常というものを意識し続けなければならないと
は ―――
...
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25Oct07
建が無責任に大きな声で笑うのを聞いて、智は腑に落ちない気持ちでいっぱいだった。
「ちょっと建さん、笑ってる場合じゃないですよ。そこで認めちゃったら全然説得力が無
いじゃないですか」
「ハハハ、ごめん、ごめん。俺も頭では分かっちゃいるんだけどな、なかなか上手く実行
に移せないよ、ハハハハハ」
建は笑いながら歩き続けた。智は、小声で文句を言いながらそんな建の後を追った。
食事の後、二人はニューデ...
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30Oct07
「建さんでもあんな風に怒ることがあるんですね」
智がそう言うと、建はちょっと不思議そうに智の方に目を向けた。
「ああ、俺、インド人嫌いだからな。ああいうことされると本当に腹が立つんだよ。多い
だろ? あんな奴」
「でも建さん、インド長いでしょ? 何回も来てるんだし。もう三回目ぐらいだって言っ
てたじゃないですか。そんなに長くいても駄目なんですか? 最初の内はああいうことに
腹が立ったりしても、そ...
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