05Dec06
「智、金持ってないか? 心路のせいで六百足んないんだよ。持ってたら貸してくれよ、きっと明日返すからさ、明日銀行に行けばすぐ返せるんだ」
「ごめん、直規、俺も三百ルピーぐらいしか持ってないんだ……」
智は、そう言いながら、自分の方へ向けられた直規の目に全身の毛が逆立つような思いがした。それは明らかにいつもの直規の目ではなかった。黒々と見開かれた瞳には、何かに取り憑かれたような輝きがあった。それはブ...
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10Dec06
直規は興奮してそう言うと、智はそれを制すように言った。
「俺も買うよ」
少し呆然として直規は智を見返した。
「智、マジかよ、無理しなくていいんだぜ、金なら明日返すから無理に買わなくたって今、貸しといてくれれば」
「いや、違うんだ、何となく興味が湧いて来たんだ。そしたらふとドルキャッシュ持ってること思い出してさ。だから気にしなくていいんだ」
「そうか、助かったよ、智、ありがとう」
表情を輝かせ...
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15Dec06
三人は、ゆっくりと夜のプシュカルの町を歩いている。ヒンドゥー教にとって聖なるこの町は、やはりそれなりの聖地の匂いのようなものを放っている。霊的な雰囲気を醸しだしている。それは例えばサドゥーと呼ばれる髪も髭も伸ばし放題の修行僧が町のあちこちに見受けられるからなのかも知れないし、直規達が泊まっているゲストハウスの近くにある湖に面した沐浴場で、朝日や夕日に向かって祈りを捧げる人達を日常的に見ることがで...
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20Dec06
部屋に帰ると、智は、ベッドに腰掛けて紙包みを広げた。そこには確かに茶色い粉が包みこまれていた。先程の直規と心路の様子を思い出す。反吐を吐きながらも恍惚とした表情で快感に溺れている二人。一体彼らは、空ろな目で何を見ていたんだろう。どんな世界をふらつきながら歩いていたのか。ちょっと想像がつかなかった。
ゾクゾクするような感覚を智は全身に感じていた。とても恐ろしいのだが、それ以上に惹きつけられている...
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25Dec06
砂漠地帯の朝は眩しく乾燥している。日中の倒れるぐらいの日差しと暑さはまだ息をひそめており、真っ青な濃い空と眩しい光だけが町を覆っている。土地の人々は、そんな気候をよく知っていて、清々しい朝を最高の気分で迎えられるように町を造っている。建物を立てている。
智の泊まっているゲストハウスは、二階建てで小さな中庭のある小じんまりとした建物だった。土壁のような物で造られている外壁は、漆喰で塗ったように白...
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30Dec06
「で、どうだったの?」
「いや、何か、思ってたのと違ったよ。もっと凄いの想像してたから……。昨晩の直規達の様子も見てたし……」
直規は、微笑みながら煙草に火をつけた。そして眠そうに欠伸をひとつすると、智の方へ体を向けた。
「俺も帰ってからかなり大変だったけど、心路なんか朝までずっと吐いてたよ。宿の奴が、心配して見に来たぐらい」
「みんな最初はそうなるもんなの?」
「ああ、何回かやってるとそのうち...
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