01Nov06
「場所はどこなの?」
「クリシュナ・ゲストハウス」
「ああ、あの?」
「そう、シバとかいうふざけた名前のインド人がいるところだよ」
「で、どれだけって言ったの?」
「二グラム」
「信用できる奴?」
「ああ、プシュカルではみんなあいつから買うらしい。それかイスラエリーだね、でも、イスラエリーはカミとかバツばっかりだし、奴らからは買えないでしょ」
「インド人からはあんまり買いたくないんだけどな」
「...
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02Nov06
「智はこれからどうするの?」
「え、ああ、飯食いにいくよ」
「ハハハ、違うよ、この町の後だよ、旅の話」
「ああ、そうか、そうだね、ジャイサルメールに行こうと思う。ラジャスターンの町をいくつか回って、それからデリーへ行くつもり」
「俺らもこれからデリーに向かうつもりだよ、その後マナリーに行く。もうすぐシーズンだしね。まあ、まだ当分ここにいるだろうけど」
欠伸をしながら心路が横から口を挟んだ。直規は...
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03Nov06
結局そのまま何をすることもなく時間は経った。すっかり夜も更けて、裸電球の明かりだけが侘びしく灯っている。
「直規君、そろそろ時間だよ」
「ああ」
直規は、寝転んだ姿勢のまま面倒臭そうに返事をした。
「ところでそいつ、幾らって言ってた?」
「確か千ルピーだって……」
「グラム?」
「ああ」
「値切ってみた?」
「一応ね」
「一応ってどういうことだよ、二グラム買うんだからちょっとは安くできるだろ?...
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11Nov06
「直規君、そろそろ行かないと……」
心路は、俯いている直規に向かってそう言った。ようやく直規は、落ち着いたという風にゆっくりと顔を上げた。
「そうだな、行こうか、行かなきゃな……。しかしキマッたな、これは……」
下を向いたまま智は動かない。
「おい、智、大丈夫か? サトシ?」
智の肩を揺すりながら直規はそう言った。
「あ、ああ、そうだよ、行かなくちゃ、行くんだよな、ブラウンだっけ、そうだよ、...
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12Nov06
月が、三人の頭上でひっそりと輝いている。智は、ぼんやりとそれを眺めた。
月は揺れているようだった。微妙に振動して光の波動を発しているのだ、と智は何となく思った。そしてその銀色の波動を自分は今全身に浴びている、と想像すると、今ここでこうして歩いているだけのことが凄く素晴らしいことのように思えてきて、自然と幸せな明るい気分になるのだった。そして全く異国の土地で、日本では全く見ず知らずだった日本人と...
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13Nov06
少し坂になったその道をちょっと行くと右手に低い門と柵があって、そこにアルファベットで「クリシュナ・ゲストハウス」と書かれている。門の内側には小さな庭があり、L字型になった二階建ての建物は明るいベージュ色に塗られていて、見た感じは小ざっぱりとして、悪くはなかった。正面にいくつか見られる緑色の木の扉には番号が記されており、そこが宿泊用の部屋だということを表している。庭に生えている二本の木の間にはハン...
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19Nov06
シバと呼ばれるその男は、小柄で、年はタンクトップよりも若そうな感じなのだがどこか落ち着いた雰囲気を醸し出している。切れ長の目が静かに光っており、その瞳は常に遠くを見ているようだった。恐らくハイ・カーストの人間なのだろう。着ているものも小綺麗で、さっぱりとしている。
インドという国は、カースト制という名の階級制度が非常に細かく厳格に設定されており、ハイ・カーストとロー・カーストとの間の親密な交流...
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25Nov06
「落ち着きなよ、マイフレンド、これは本当に上物なんだ、三グラムにしたって何が変わっていうんだ? 千ルピーぐらい、君達にとってはどうってことない額じゃないか。絶対に買っとくべきだよ」
直規は、無言でタンクトップを一瞥すると、溜め息まじりに心路に言った。
「心路、どうするよ? 三グラムだってよ。話がややこしくなってる。長くかかりそうだぜ」
少し考えてから心路は言った。
「じゃあ、三グラム買うとして...
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30Nov06
直規は、しばらくの間、ムズムズする鼻を啜ったり少し指で擦ったりしながら効き目が表れるのを待った。その間に心路は、直規からカードを受け取ると粉をすくって同じように鼻から吸引した。そして鼻を擦りながら、シバに向かって、やる? という風にカードを差し出した。
シバは、目を閉じゆっくりと首を振りながら、いいや、私はやらない、と胸の前で両手を広げた、と、その途端、直規が急に呻き声をあげた。
「うわっ、こ...
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